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債務償還年数とは?計算方法・目安・改善方法を公認会計士・税理士が解説

Relyne(リライン)会計事務所の永野です。

債務償還年数は、借入金を何年で返済できるかを示す指標で、銀行の融資審査では自己資本比率と並んで影響が特に大きい指標です。この年数が10年を超えると新規融資を受けることが難しくなるため、借入で資金調達を行う会社は、自社の債務償還年数を把握しておく必要があります。

本記事では、債務償還年数の計算方法・目安・銀行が行う決算書の補正・改善方法を公認会計士・税理士が解説します。

当事務所では、記帳代行や税務申告だけでなく、毎月の数字をもとにした経営改善・資金繰りのアドバイスまで行っています。初回無料相談も承っておりますので、税金や会計についてはもちろん、資金調達・資金繰りに関しても、お気軽にお問い合わせください。

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1. 債務償還年数とは

1-1 借入金を何年で返済できるかを示す指標

債務償還年数とは、借入金を、会社が1年間に生み出すキャッシュフロー(手取り収入)の何年分で返済できるかを示す指標です。銀行はこの指標で、会社の収益力に対して借入が多すぎないかを判定します。

たとえば、借入金が3,000万円で、年間のキャッシュフローが500万円の会社であれば、債務償還年数は6年です。今の稼ぐ力を6年間続ければ、借入金を全額返済できることを意味します。

単位が「年」で表されるため、借入の重さを直感的につかむことができます。

なお、債務償還年数は返済能力を測るための計算上の年数であり、実際の借入の返済期間(約定返済のスケジュール)とは別物です。債務償還年数が6年でも、10年の約定で借りていれば、実際の返済は10年かけて行います。

1-2 債務償還年数の計算方法

債務償還年数は、次の計算式で求めます。

債務償還年数 =(有利子負債 − 所要運転資金)÷(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)

分子の「有利子負債 − 所要運転資金」は、実質的に返済が必要な借入金の額で、要償還債務と呼ばれます。分母の「経常利益 + 減価償却費 − 法人税等」は、1年間に会社に残るお金(返済原資)を簡易的に計算したもので、簡易キャッシュフローと呼ばれます。

計算に使う数字は、次のとおり決算書から拾います。

項目 決算書上の数字
有利子負債 短期借入金・長期借入金・社債など、利息を付けて返済する負債の合計
所要運転資金 売上債権(売掛金・受取手形)+ 棚卸資産 − 仕入債務(買掛金・支払手形)
マイナスになる場合は0円として計算する
経常利益 損益計算書の経常利益
減価償却費 損益計算書(販管費)と製造原価報告書に計上した減価償却費の合計
法人税等 損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」

減価償却費を経常利益に足し戻すのは、減価償却費が「費用として利益を減らすものの、お金は出ていかない項目」だからです。設備を買ったときにお金は既に支払っており、その後に費用計上される減価償却費の分のお金は手元に残るため、返済原資に加えて計算します。

たとえば、次のような会社を考えます。

  • 有利子負債:4,000万円(短期借入金500万円・長期借入金3,500万円)
  • 売上債権:1,200万円、棚卸資産:600万円、仕入債務:800万円
  • 経常利益:500万円、減価償却費:150万円、法人税等:150万円

所要運転資金は、1,200万円 + 600万円 − 800万円 = 1,000万円
簡易キャッシュフローは、500万円 + 150万円 − 150万円 = 500万円
債務償還年数は、(4,000万円 − 1,000万円)÷ 500万円 = 6年となります。

1-3 所要運転資金を差し引く理由

計算式で有利子負債から所要運転資金を差し引くのは、所要運転資金に相当する借入は、返済を求めなくてよい借入とみなすためです。

所要運転資金は、売上の入金と仕入の支払いのタイミングのズレから生じる立て替え資金です。商品を仕入れて在庫として持ち、販売して売掛金となり、入金されるまでの間、会社は先に支払ったお金を立て替え続けています。このズレは事業を続ける限り常に発生するため、所要運転資金の分の資金は事業を続ける間ずっと必要になります。

一方で、事業をやめるときには、売掛金は回収され、在庫は販売され、立て替えていたお金は戻ってきます。銀行から見れば、所要運転資金の分の借入は、最終的に売掛金や在庫の換金で回収できるため、利益から返済してもらう必要のない借入です。そのため、返済能力を測る債務償還年数の計算では、有利子負債から所要運転資金を除き、残りの要償還債務(利益から返済すべき実質的な借金)だけを対象にします。

運転資金については「運転資金とは?種類・計算方法・目安を公認会計士・税理士が解説」で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。

1-4 融資の審査で重視される理由

銀行は、決算書の財務指標をスコアリングして財務格付を行い、その結果をもとに債務者区分(正常先・要注意先など)を決めています。この財務格付で影響が特に大きい指標が、自己資本比率債務償還年数の2つです。自己資本比率が「会社の潰れにくさ」を示すのに対して、債務償還年数は「貸したお金が利益から何年で返ってくるか」という返済能力そのものを示すため、銀行はこの2つで会社の信用度の大枠を判定しています。

債務償還年数は、融資額の上限の判断にも使われます。銀行の目線では、債務償還年数が10年に達するまでは貸出の余地があると判断できるため、「年間キャッシュフロー × 10年 − 既存の要償還債務」が、その会社に追加で貸すことのできる金額の上限になります。
先ほどの計算例の会社(キャッシュフロー500万円・要償還債務3,000万円)であれば、500万円 × 10年 − 3,000万円 = 2,000万円が追加借入の上限の目安です。自社の債務償還年数を把握しておくと、いくらまで借りることができるかを自分で見積もることができます。

格付と債務者区分、自己資本比率については、それぞれ以下の記事で詳しく解説しています。
債務者区分とは?正常先〜破綻先の違いと資金調達への影響を公認会計士・税理士が解説
自己資本比率の目安は?業種別平均・計算方法・高める方法を公認会計士・税理士が解説

2. 債務償還年数の目安

2-1 10年未満は必達、目標は7年未満

銀行融資の観点からみた債務償還年数の水準は、次のとおりです。

債務償還年数 銀行からの評価
5年未満 優良な水準。無担保・無保証などの好条件を交渉しやすい
5年以上7年未満 良好な水準。追加借入の余地も十分にある
7年以上10年未満 正常先と判断される水準だが、追加借入の余地は小さい
10年以上 キャッシュフローに対して借入が過大と評価され、新規融資が難しくなる
キャッシュフローがマイナス 計算不可。返済原資がない状態で、新規融資は困難

分岐となる水準は10年です。債務償還年数が10年未満であれば、銀行から正常先と判断されやすく、融資にも応じてもらいやすくなります。10年を超えると、今の収益力では返しきれないほど借りている会社と評価され、新規融資が難しくなります。

そのうえで、目標にすべき水準は7年未満です。10年ぎりぎりの状態では、業績が少し悪化しただけで10年を超えてしまいますし、追加借入の余地もほとんど残っていません。7年未満を保っておけば、業績変動への余裕と、設備投資や急な資金需要に備えた借入余地の両方を確保することができます。さらに5年未満まで短くなると、優良先として金利や担保・保証の条件を交渉しやすくなります。

なお、不動産賃貸業やホテル・旅館業など、建物に多額の投資が必要な業種では、10年を超える債務償還年数を許容する銀行もあります。建物への投資は回収に長い年月がかかる一方、家賃や宿泊料として安定した収入が長く続くため、融資自体も返済期間20年以上で組まれることが多いからです。ただし、これはあくまで一部の業種に対する見方です。多額の設備投資を必要としない業種であれば、10年未満は必達、目標は7年未満と考えましょう。

2-2 キャッシュフローがマイナスの場合

分母の簡易キャッシュフロー(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)がマイナスの場合、債務償還年数は計算することができません。何年あっても借入金を返済できない、返済原資がない状態を意味するため、銀行の評価は10年以上の場合よりもさらに厳しく、新規融資は困難になります。

なお、ここで見られているのは赤字か黒字かではなく、キャッシュフローがプラスかどうかです。経常利益が赤字でも、減価償却費が大きければキャッシュフローはプラスになり、債務償還年数を計算することができます。

また、一時的な特殊要因(災害損失・退職金など)でキャッシュフローがマイナスになった場合は、その要因を除いた実態がどうかということを銀行に説明しましょう。銀行には一過性の費用を除いて実態の収益力を評価する補正の仕組みがあるため、原因と今後の見通しを説明できれば、1期のマイナスだけで評価が確定するわけではありません。

3. 銀行が行う決算書の補正

銀行は、決算書の数字をそのまま使うのではなく、実態に合わせて補正したうえで債務償還年数を計算しています。決算書上の債務償還年数が10年を超えていても補正後は10年未満になる会社もあれば、その逆もあります。代表的な補正は次の2つです。

3-1 役員報酬の補正(600万円基準)

多くの銀行は、代表者の役員報酬について600万円を基準とした補正を行っています。役員報酬が600万円を超えている場合は、超える部分を経常利益に加算し、600万円を下回っている場合は、その分を経常利益から減算して、実態のキャッシュフローを計算し直します。

この補正が行われるのは、役員報酬が経営者の裁量で決めることのできる費用だからです。たとえば、役員報酬を年1,000万円取っている会社は、いざとなれば生活に必要な水準を超える400万円分を返済に回すことができると銀行はみなし、その分を返済原資に加えて評価します。逆に、役員報酬を年300万円に抑えて利益を大きく見せている会社は、本来必要な報酬水準まで利益を割り引いて評価されます。

つまり、役員報酬を削って利益をかさ上げしても、銀行の評価は上がりません。一方で、役員報酬を厚く取っているために決算書上の債務償還年数が10年を超えている会社は、補正後の数字では基準を満たしている可能性があります。

役員報酬の決め方については「会社設立したら必見!役員報酬の決め方と損金算入ルールを税理士が解説」で詳しく解説しています。

3-2 一過性の費用の補正

役員報酬のほかにも、銀行は損益計算書を実態に近づける補正を行います。

災害損失、役員退職金、固定資産の売却損など、その期だけ発生した一過性の費用は、費用から除いて実態の収益力を評価します。また、節税目的の保険料や過大な交際費など、事業に必須とはいえない支出を利益に足し戻して評価する銀行もあります。

こうした補正の仕組みがあるため、赤字や一過性の費用が出た期は、決算の内容を銀行に説明することで評価が変わります。「この費用は今期限りのもので、それを除けば実態は黒字」と伝えることができれば、銀行は実態ベースで評価しやすくなります。赤字決算になった場合は、決算書を提出して終わりにせず、赤字の原因と実態の数字まで説明しましょう。

4. 債務償還年数を改善する方法

債務償還年数の計算式は「要償還債務 ÷ キャッシュフロー」なので、改善する方法は、分母のキャッシュフローを増やすか、分子の要償還債務(借入金)を減らすかの2つに分かれます。
具体的には次の4つの方法があります。

4-1 利益を増やす

債務償還年数を改善する中心となる方法は、経常利益を増やすことです。値上げや原価・経費の見直しで利益体質に改善できれば、分母のキャッシュフローが増えて債務償還年数は短くなります。

一方で、経費や保険などで利益を圧縮すると、税負担は減りますが、分母のキャッシュフローも減るため、債務償還年数は長くなります。たとえばキャッシュフロー500万円・要償還債務3,000万円(債務償還年数6年)の会社が、節税のために利益を200万円圧縮すると、キャッシュフローはおよそ360万円まで減り、債務償還年数は8年台まで悪化します。融資を受けて事業を成長させたい会社は、資金繰り面も含め、利益を出して税金を払いキャッシュフローを厚くするほうが良いことも多いです。

4-2 余剰資金で借入金を返済する

手元の現預金に余裕がある場合は、借入金の繰上返済で分子の要償還債務を直接減らすことができます。支払利息が減る分、分母のキャッシュフローも増えます。

ただし、返済のしすぎは危険です。現預金は月商2ヶ月分以上を残したうえで、余剰資金の範囲で行いましょう。債務償還年数を縮めるために手元資金を削って返済すると、突発的な支払いに対応できず、黒字のまま資金繰りに行き詰まるリスクを抱えます。手元資金が薄くなってから慌てて借入を申し込んでも、そのタイミングで必ず借りることができる保証はありません。

黒字にもかかわらず倒産してしまう黒字倒産については「黒字倒産とは?原因と対策を公認会計士・税理士が解説」も合わせてご参照ください。

4-3 使っていない資産を売却して返済に充てる

事業に使っていない資産があれば、売却して借入金の返済に充てることで、手元資金を減らさずに分子を圧縮することができます。対象になるのは、遊休状態の土地・建物・設備・車両、ゴルフ会員権、解約可能な保険の積立などです。

含み損のある資産の売却は、売却損の計上で法人税等の負担も減るため、税負担を抑えながら借入を圧縮することができます。また、収益を生まない資産を処分することは、総資産の圧縮を通じて自己資本比率の改善にもつながります。

4-4 キャッシュフローを生まない借入をしない

借入をして設備投資を行うと、分子の借入金が増えます。その投資が利益を生めば分母のキャッシュフローも増えるため、債務償還年数は健全な水準を保つことができますが、節税目的の資産購入や収益につながらない設備など、キャッシュフローを生まない投資を借入で行うと、分子だけが増えて債務償還年数は悪化します。

借入で投資を行うときは、事前に投資後の債務償還年数を試算し、投資が生むキャッシュフローで7年以内に回収できるかを確認しましょう。7年以内に回収できる見込みが立たない投資は、金額を見直すか、実行を見送ることも判断のうちです。

5. Q&A

Q1. 創業して間もない会社は、債務償還年数が10年を超えていても仕方ないですか?

A. 創業から数年は、創業融資などの借入が大きい一方で利益がまだ薄いことも多いため、債務償還年数が10年を超えることは珍しくありません。この段階の会社に対して、銀行は年数の数字だけで機械的に判断するのではなく、創業計画と実績の対比で評価します。計画どおりに売上・利益が伸びており、黒字化と借入圧縮の見通しを説明できれば、10年を超えていても直ちに評価が下がるわけではありません。

Q2. 手元の現預金が多い場合、その分は借入金から差し引いて見てもらえますか?

A. 差し引いて評価する銀行もあります。

預金はいつでも返済に充てることができるため、有利子負債から所要運転資金だけでなく現預金も差し引き、実質的な借金だけで債務償還年数を計算するという見方です。この見方では、現預金が借入金を上回る実質無借金の会社は、債務償還年数に問題なしと評価されます。

ただし、すべての銀行が現預金を差し引くわけではありません。自社の目標としては、現預金を差し引かない計算式で10年未満・7年未満を満たすことを目指し、現預金の厚みは銀行への説明材料として使いましょう。

Q3. 社長からの借入金(役員借入金)は、債務償還年数の計算に含まれますか?

A. 銀行によって扱いが分かれます。

銀行借入と同じ借金として分子に含める銀行もあれば、社長の判断で返済を待つことができる資金として、計算から除く銀行もあります。役員借入金の残高が大きい会社では、どちらで扱われるかによって債務償還年数が大きく変わります。

自社でできる対応としては、決算書上、銀行借入と合算せずに「役員借入金」として区分表示しておくことです。銀行借入と区別がつかない表示になっていると、そのまま借金として計算されやすくなります。

6. まとめ

債務償還年数について、計算方法・目安・銀行が行う補正・改善する方法を解説しました。
ポイントは次のとおりです。

  • 債務償還年数は借入金を何年で返済できるかを示す指標
    「(有利子負債 − 所要運転資金)÷(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)」で計算する
    銀行の財務格付では自己資本比率と並んで影響が大きい
  • 目安は「10年未満は必達、目標は7年未満」
    10年以上は新規融資が難しく、7年未満なら業績変動への余裕と追加借入の余地が生まれる
  • 銀行は決算書を補正して実態の債務償還年数を見ている
    役員報酬600万円基準・一過性費用の扱いで、決算書上の数字と評価は変わる
  • 債務償還年数の改善方法は、①利益を増やす ②余剰資金で返済する ③不要資産を売却して返済する ④キャッシュフローを生まない借入をしない
    中心は利益の増加で、過度な節税はキャッシュフローを削り債務償還年数を悪化させる
  • キャッシュフロー × 10年 − 既存の要償還債務が追加借入の上限の目安
    自社の数字を把握しておけば、いくらまで借りることができるかを見積もることができる

当事務所では、記帳代行や税務申告だけでなく、毎月の数字をもとにした経営改善・資金繰りのアドバイスまで行っています。初回無料相談も承っておりますので、税金や会計についてはもちろん、資金調達・資金繰りに関しても、お気軽にお問い合わせください。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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