履歴事項全部証明書とは?記載内容・必要な場面・取得方法を税理士が解説
Relyne(リライン)会計事務所の永野です。
会社を設立すると、法人口座の開設、税務署や自治体への届出、オフィスの賃貸借契約など、さまざまな場面で「履歴事項全部証明書」の提出が必要になります。しかし、「登記簿謄本と何が違うのか」「どこで、いくらで手に入るのか」など、手続きのたびに戸惑う方は少なくありません。
本記事では、履歴事項全部証明書の記載内容、必要になる場面、取得にかかる費用、取得方法まで公認会計士・税理士が解説します。
当事務所では、税務署・自治体への届出から経理業務・税務申告、創業融資の申請まで、会社設立後に必要な手続きをまとめてサポートしています。「設立したものの、何から手を付ければいいか分からない」という方は、初回無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
目次
1. 履歴事項全部証明書とは
1-1 会社の登記内容を証明する書類
履歴事項全部証明書とは、法務局に登記されている会社の情報(商号・本店所在地・資本金・役員など)を証明する書類です。会社の登記情報は一般に公開されており、手数料を支払えば、誰でも、どの会社の証明書でも取得できます。
記載されるのは、現在効力のある登記事項に加えて、請求日の3年前の日が属する年の1月1日以降に変更・抹消された履歴です。例えば2026年7月に請求した場合、2023年1月1日以降の本店移転や役員変更の履歴が載ります。それより前の履歴を確認したい場合は、後述の「閉鎖事項証明書」を取得します。
会社の基本情報を公開することで取引の安全を図るのが登記制度の趣旨であり、金融機関・行政機関・取引先が「この会社は実在するのか」「代表者は誰か」を確認する手段として、履歴事項全部証明書が使われています。
1-2 登記簿謄本・登記事項証明書との違い
かつて登記記録は紙の「登記簿」で管理されており、その写しを「登記簿謄本」と呼んでいました。現在は登記記録がデータ化されているため、正式名称は「登記事項証明書」に変わっています。名称が違うだけで書類の役割は同じで、「登記簿謄本を提出してください」と案内された場合は、履歴事項全部証明書を提出すれば問題ありません。
登記事項証明書は、記載される情報の範囲によって次の4種類に分かれます。
| 種類 | 記載内容 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 履歴事項証明書 | 現在効力のある事項+請求日の3年前の年の1月1日以降の変更履歴 | 各種手続き全般 |
| 現在事項証明書 | 請求日時点で効力のある事項のみ | 最新の情報だけを示したい場合 |
| 閉鎖事項証明書 | 閉鎖された登記記録 (履歴事項証明書に載らない古い履歴、管轄外へ本店移転する前の記録など) |
過去の登記内容を調べる場合 |
| 代表者事項証明書 | 代表者の代表権に関する事項 | 訴訟などで代表者の資格のみ証明する場合 |
このうち履歴事項証明書・現在事項証明書・閉鎖事項証明書には、登記事項の全部を記載した「全部証明書」と、特定の区分だけを記載した「一部証明書」があります。履歴事項証明書の全部証明書が「履歴事項全部証明書」です。現在の登記内容に加えて直近数年の変更履歴まで確認できるため、提出先から種類の指定がない場合はこれを取得しておけば足ります。
1-3 記載事項
株式会社の履歴事項全部証明書には、主に次の項目が記載されます(機関設計や増資の状況などにより、会社ごとに項目は増減します)。
- 会社法人等番号:法務局が法人ごとに付す12桁の番号
- 商号:会社名。変更した場合は旧商号も表示
- 本店:本店所在地。移転した場合は旧住所も表示
- 公告をする方法:官報、電子公告など
- 会社成立の年月日:設立登記を申請した日(=会社設立日)
- 目的:定款に定めた事業目的
- 発行可能株式総数/発行済株式の総数
- 資本金の額
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 役員に関する事項:取締役・監査役等の氏名、代表取締役の氏名と住所、就任・重任の日付
- 登記記録に関する事項:設立、他管轄からの移転など、登記記録が起こされた経緯
なお、会社法人等番号(12桁)と、国税庁が指定する法人番号(13桁)は別の番号です。法人番号は、会社法人等番号の頭に1桁の検査用数字を加えたものです。登記申請や証明書の交付申請など法務局関係の書類では会社法人等番号を、法人税の申告書・法人設立届出書・社会保険の届出など税・社会保険関係の書類では法人番号を使用するため、混同しないよう注意しましょう(インボイスの登録番号も「T+法人番号」です)。
2. 履歴事項全部証明書が必要になる場面
履歴事項全部証明書は、次のような場面で提出が必要になります。

- 法人設立届出書の提出(都道府県税事務所・市町村役場)
都道府県・市町村へ法人設立届出書を提出する際の添付書類として必要です。
一方、税務署に提出する際の添付書類は定款の写しのみで、登記事項証明書は不要です。
法人設立届出書については「法人設立届出書の提出先・期限・書き方|会社設立後の手続きを税理士が解説」で詳しく解説しています。 - 社会保険・労働保険の加入手続き
年金事務所での健康保険・厚生年金保険の新規適用手続きでは、提出日からさかのぼって90日以内に発行された原本の添付が必要です(コピー不可)。従業員を雇う場合の労働保険(労働基準監督署・ハローワーク)の手続きでも使用します。 - 法人口座の開設
金融機関は、口座開設の審査で登記事項証明書により会社の実在と代表者を確認します。 - オフィス・店舗の賃貸借契約など法人名義の契約
事業用物件の賃貸借契約のほか、社用車の購入・リース、法人カードの申込みなどでも必要になります。 - 創業融資・補助金の申請
日本政策金融公庫の融資や自治体の制度融資、補助金の申請書類として必要になります。
創業融資については「創業融資とは?日本政策金融公庫の制度内容・申込みの流れ・審査のポイントを公認会計士・税理士が解説」で詳しく解説しています。 - 許認可の申請
建設業、飲食業、古物商、人材派遣業など、許認可が必要な業種では申請時・更新時に提出します。証明書に記載された「目的」が審査対象になるため、定款の事業目的に許認可対象の事業が入っていないと、目的変更登記を求められるなど申請がスムーズに進まない可能性があります。
事業目的の書き方については「【記載例付き】定款の事業目的の書き方|5つのポイントを税理士が解説」をご参照ください。 - 変更登記など法務局での手続き
本店移転や役員変更の登記手続きの準備として、現在の登記内容の確認に使用します。 - 取引先の調査
誰でも取得可能なため、新規取引先の実在確認や与信管理の目的で、他社の証明書を取得することもあります。
3. 取得に必要なもの・かかる費用
3-1 取得に必要なもの
取得に必要なのは、取得したい会社の商号・本店所在地の情報と手数料だけです。本人確認書類・印鑑・委任状はいずれも不要で、会社の関係者でなくても取得できます。従業員や家族に取りに行ってもらう場合も、委任状は要りません。
申請方法ごとに用意するものは次のとおりです。
| 申請方法 | 用意するもの |
|---|---|
| オンライン | 申請者情報の登録(無料・初回のみ) 電子納付の手段(インターネットバンキング等) |
| 窓口 | 登記事項証明書交付申請書 収入印紙(600円分) |
| 郵送 | 登記事項証明書交付申請書 収入印紙(600円分) 返信用封筒(宛先記入・切手貼付) |
交付申請書の様式と記載例は、法務局のホームページからダウンロードできます。
参考:法務局|登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式
3-2 取得にかかる費用(手数料)
手数料は1通あたり次のとおりです(2025年4月1日改定後の金額)。
| 申請方法 | 手数料(1通) | 支払方法 |
|---|---|---|
| オンラインで請求・郵送で受取 | 520円 | 電子納付 |
| オンラインで請求・窓口で受取 | 490円 | 電子納付 |
| 窓口で請求 | 600円 | 収入印紙 |
| 郵送で請求 | 600円+往復の郵送料 | 収入印紙 |
オンライン請求が最も安く、窓口・郵送より1通あたり80〜110円安くなります。
4. 履歴事項全部証明書の取得方法
取得方法は「オンライン」「窓口」「郵送」の3つです。
急ぎなら窓口、それ以外はオンライン請求(郵送受取)がおすすめです。
4-1 オンラインで請求する
法務省の「登記・供託オンライン申請システム」の「かんたん登記・供託申請」から請求する方法です。専用ソフトのインストールは不要で、Webブラウザだけで手続きが完結します。手数料が最も安く、法務局に行かずに完結するため、急ぎでなければこの方法をおすすめします。
手順は次のとおりです。
- 申請者情報を登録する(初回のみ・無料):氏名・住所・メールアドレス等を登録します。マイナンバーカードや電子証明書は不要です。
- 「かんたん登記・供託申請」で会社を検索し、証明書の種類と通数を選ぶ:商号または会社法人等番号で検索し、「履歴事項証明書(全部)」を選択します。
- 受取方法を選ぶ:指定した住所への郵送か、指定した法務局の窓口での受取かを選択します。PDFなど電子データでの交付には対応していません。
- 手数料を電子納付する:インターネットバンキングまたはPay-easy対応ATMで納付します。収入印紙は不要です。
システムの利用時間は平日8時30分〜21時(土日祝日・年末年始を除く)です。
※2026年8月3日からは平日8時30分〜23時、土日祝日8時30分〜18時に拡大されます。
郵送受取の場合、納付から手元に届くまで2〜3日程度かかります。
参考:法務省|オンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について
参考:法務省|登記・供託オンライン申請システム
4-2 法務局の窓口で請求する
請求したその場で受け取ることができるため、今日中に必要という場合はこの方法が確実です。
本店所在地の管轄に関係なく、全国どこの法務局でも取得できます。
窓口に備え付けの交付申請書に商号・本店所在地を記入し、「履歴事項証明書(全部)」にチェックを入れて通数を書き、600円分の収入印紙を貼って提出します。収入印紙は法務局内の印紙売場で購入することができるため、事前準備は不要です。混雑状況にもよりますが、提出から10〜30分程度で交付されます。
証明書発行請求機が設置されている法務局では、機械にタッチパネルで入力すれば申請書の記入は不要です。
窓口の対応時間は平日9時〜17時(土日祝日・年末年始を除く)です。業務取扱時間自体は8時30分〜17時15分ですが、2024年1月から窓口対応時間は9時〜17時に短縮されています。
4-3 郵送で請求する
交付申請書をダウンロードして記入し、600円分の収入印紙を貼り、宛先を書いて切手を貼った返信用封筒を同封して法務局へ郵送する方法です。発送から届くまで数日〜1週間かかります。
手数料600円に往復の郵送料が加わるため費用は3つの方法で最も高く、時間も最もかかります。
そのため、オンライン請求の環境がない場合にのみ選ぶ方法です。
4-4 内容の確認だけなら「登記情報提供サービス」
提出用の証明書ではなく、登記内容を確認したいだけであれば、「登記情報提供サービス」でPDFの登記情報を閲覧する方法もあります。
- 料金:全部事項1件330円(2026年4月1日改定後の金額)
- 利用時間:平日8時30分〜23時、土日祝日8時30分〜18時
- 利用方法:クレジットカードによる「一時利用」なら、登録費用なしですぐに利用することができます
証明書より安く、土日祝日や夜間でもその場でPDFを確認できるため、取引先の登記内容のチェックや、変更登記前の自社の登記内容の確認に向いています。ただし、登記官の認証文・職印がないため、証明書として提出書類に使うことはできません。提出が必要な手続きでは履歴事項全部証明書を取得する必要があります。
5. Q&A
Q1. 会社を設立した直後でも取得できますか?
A. 設立登記が完了するまでは取得することができません。
設立登記は、法務局に申請してから完了まで通常1週間前後(法務局の混雑状況によりさらに数日)かかります。登記申請日が会社設立日になりますが、履歴事項全部証明書を取得することが可能になるのは登記完了後です。
法人口座の開設や社会保険の手続きは証明書がないと進まないため、設立後のスケジュールは登記完了日を起点に設定しましょう。
Q2. 「履歴事項全部証明書の写し」の提出を求める案内がありました。コピーで良いのでしょうか?
A. 「写し」はコピーを指します。取得した履歴事項全部証明書をコピーして提出すれば足ります。もともと「謄本」という言葉自体が「写し」という意味で、履歴事項全部証明書は登記記録データを法務局が書面にしたものです。
一方、年金事務所の社会保険手続きのように「原本」と明記された手続きではコピーでは受け付けてもらえないため、案内文の「原本」「写し(コピー可)」の表記で判断しましょう。
Q3. コンビニや市役所で取得できますか?
A. 取得することはできません。
個人の住民票や印鑑登録証明書はマイナンバーカードでコンビニ交付に対応していますが、会社の登記事項証明書を発行するのは法務局だけです。法務局に行かずに入手したい場合は、オンライン請求の郵送受取を利用しましょう。
Q4. 有効期限はありますか?
A. 証明書そのものに法律上の有効期限はありません。
ただし、提出先は「発行後3か月以内」といった発行時期の条件を付けるのが通例です。
Q5. 自宅の住所が公開されるのを避ける方法はありますか?
A. 「代表取締役等住所非表示措置」の申出が認められると、証明書に表示される代表取締役の住所を市区町村まで(例:「東京都千代田区」まで)にとどめることができます。2024年10月に始まった制度で、設立登記や役員変更登記などの登記申請と同時に法務局へ申し出ます。
ただし、住所を非表示にすると、登記事項証明書で代表者の住所を証明する手段がなくなるため、金融機関の融資審査や不動産契約などで追加の書類(代表者個人の印鑑証明書など)の提出が必要になり、手続きの負担が増える可能性があります。
6. まとめ
以上、履歴事項全部証明書について解説しました。
ポイントは次のとおりです。
- 履歴事項全部証明書は、法務局に登記されている会社の情報(商号・本店所在地・資本金・役員など)を証明する書類。
- 法人口座の開設、社会保険の加入、自治体への設立届出、賃貸借契約、融資・補助金、許認可などの場面で必要になる
- 商号と本店所在地が分かれば誰でも取得可能。本人確認書類・印鑑・委任状は不要
- 手数料は窓口・郵送600円、オンライン請求なら郵送受取520円・窓口受取490円。
急ぎは窓口、それ以外はオンライン請求の郵送受取
当事務所では、税務署・自治体への届出から経理業務・税務申告、創業融資の申請まで、設立直後に必要な手続きをまとめてサポートしています。初回無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。

