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棚卸資産回転期間とは?計算方法・目安・改善方法を公認会計士・税理士が解説

Relyne(リライン)会計事務所の永野です。

棚卸資産回転期間は、在庫が月商の何ヶ月分あるかを示す指標で、在庫の抱えすぎによる資金繰りの悪化や、滞留在庫を発見するために活用します。

本記事では、棚卸資産回転期間の計算方法・目安・改善方法を公認会計士・税理士が解説します。

1. 棚卸資産回転期間とは

1-1 在庫が月商の何ヶ月分あるかを示す指標

棚卸資産回転期間とは、棚卸資産(在庫)が月商の何ヶ月分あるかを示す指標です。
在庫回転期間とも呼ばれます。

棚卸資産とは、販売目的で保有している資産のことで、貸借対照表の流動資産に計上されます。
具体的には次のものが含まれます。

区分 内容
商品・製品 仕入れた商品や、製造が完了して販売できる状態の完成品
仕掛品 製造の途中にある未完成品
原材料・貯蔵品 製品の製造に使う材料や、未使用の消耗品など

小売業や卸売業では商品がほぼすべてを占めますが、製造業では原材料から仕掛品、製品まで、製造の各段階の在庫が棚卸資産として積み上がります。

棚卸資産回転期間が示すのは、仕入れた在庫が販売されるまでの期間です。回転期間が1.5ヶ月であれば、今のペースで販売した場合、手元の在庫がすべて売れるまでに1.5ヶ月かかることを意味します。回転期間が短いほど在庫が早く売れて現金として回収できていて、長いほど売れない在庫が残り続けている状態です。

1-2 棚卸資産回転期間の計算方法

棚卸資産回転期間は、次の計算式で求めます。

棚卸資産回転期間(ヶ月)= 棚卸資産 ÷ 月商(年間売上高 ÷ 12)

使う数字は、貸借対照表の「棚卸資産(商品・製品・仕掛品・原材料など)」と、損益計算書の「売上高」の2つです。

たとえば、次のような会社を考えます。

  • 棚卸資産:1,500万円
  • 年間売上高:1億2,000万円(月商1,000万円)

この場合の棚卸資産回転期間は、1,500万円 ÷ 1,000万円 = 1.5ヶ月です。
月商1.5ヶ月分の在庫を抱えていることを意味します。

なお、単位を「日数」で表す方法もあり、棚卸資産回転日数と呼ばれます。分母を1日あたりの売上高(年間売上高 ÷ 365)に変えるだけで、先ほどの会社であれば、1,500万円 ÷(1億2,000万円 ÷ 365日)= 約46日となります。どちらでも意味は同じなので、本記事では月数で統一します。

棚卸資産回転期間の計算方法

1-3 棚卸資産回転率との違い

似た指標に棚卸資産回転率があります。棚卸資産回転率は、1年間で在庫が何回入れ替わったかを示す指標で、「売上高 ÷ 棚卸資産」で計算します。回転期間の計算式と分子・分母が逆になっているだけで、どちらも在庫が効率よく売れているかということを表します。一般的に、回転期間は短いほど、回転率は高いほど良い状態とされます。

先ほどの会社(棚卸資産1,500万円・年間売上高1億2,000万円)であれば、棚卸資産回転率は1億2,000万円 ÷ 1,500万円 = 8回です。12ヶ月 ÷ 8回 = 1.5ヶ月となり、回転期間と一致します。

意味は同じなので、自社の管理ではどちらか一方で問題ありません。回転期間は「在庫が月商の何ヶ月分あるか」「あと何ヶ月で売り切ることができるか」を直感的につかむことができるため、資金繰りと合わせて在庫を管理する場面では回転期間の方をおすすめします。

1-4 売上原価で計算する方法との使い分け

棚卸資産回転期間には、分母に売上高ではなく売上原価を使う計算式もあります。

棚卸資産回転期間(ヶ月)= 棚卸資産 ÷(年間売上原価 ÷ 12)

在庫は仕入値(原価)で計上されている一方、売上高には利益が上乗せされています。原価100円の商品を200円で売る会社が、常に1ヶ月分の在庫を持っていたとしても、売上高ベースでは0.5ヶ月と計算されてしまいます。売上原価ベースで計算すると、原価どうしの比較になるため、在庫が実際に何ヶ月分あるかをより正確に測ることができます。

ただし、自社の決算分析では売上高ベースの計算で問題ありません。銀行の財務分析や政府統計の多くは売上高ベースの計算を使っており、月商との比較は資金繰りの感覚とも直結するためです。売上原価ベースが役立つのは、利益率の異なる会社と在庫水準を厳密に比較する場面や、社内で商品ごとの在庫日数を精密に管理する場面です。どちらのベースで計算しても、自社の過去や同業平均と比較するときに同じベースで揃えれば、分析の結論は変わりません。

1-5 融資の審査でも重視される

銀行は、決算書の財務指標をスコアリングして財務格付を行い、その結果をもとに債務者区分を決めています。棚卸資産回転期間は、この財務分析の中で資産の効率性を測る指標として使われるほか、銀行は次の2つの視点でも在庫の水準を確認しています。

1つ目は、在庫の中に価値のないものが混ざっていないかという視点です。
決算書の棚卸資産は仕入れたときの金額のまま計上されているため、売れる見込みのない不良在庫や流行遅れの商品が含まれていても、数字の上では区別がつきません。そこで銀行は、回転期間が同業他社と比べて長い会社に対して、不良在庫の分を資産から差し引いた実態ベースで評価します。この補正で自己資本が目減りすると、財務格付・融資の条件に影響します。

2つ目は、利益の水増し(粉飾)が行われていないかという視点です。
期末の在庫を実際より多く計上すると、その分だけ売上原価が減り、利益を大きく見せることができてしまいます。売上が伸びていないのに在庫だけが急増している決算書は、銀行から粉飾・誤りを疑われる可能性があります。そのため、実際に在庫が増加しただけの場合でも、理由を説明できるようにしておく必要があります。

格付と債務者区分、財務分析については、それぞれ下記記事で詳しく解説しています。
債務者区分とは?正常先〜破綻先の違いと資金調達への影響を公認会計士・税理士が解説
財務分析の5つの視点と診断ツールを公認会計士・税理士が解説

2. 棚卸資産回転期間の目安

2-1 目標は1ヶ月未満、3ヶ月以上は問題あり

棚卸資産回転期間の水準は、次のように評価します。

棚卸資産回転期間 評価
1ヶ月未満 問題のない水準
1ヶ月以上2ヶ月未満 問題はないが圧縮したい水準
2ヶ月以上3ヶ月未満 改善が必要な水準
3ヶ月以上 問題のある水準
売れない在庫や含み損を抱えている可能性が高い

目標にすべき水準は1ヶ月未満です。在庫が月商1ヶ月分に収まっていれば、在庫に眠るお金が少なく、売れ残りによる含み損のリスクも小さい状態です。

一方、3ヶ月以上は、問題のある水準となります。月商3ヶ月分の在庫とは、仕入れを完全に止めても3ヶ月間売り続けることができる量です。よほど納期の長い商売でない限り、事業に必要な水準を超えており、売れ残りや含み損を抱えている可能性が高い状態です。

なお、短ければ短いほど良いというわけではありません。在庫を絞りすぎると、注文を受けても商品がない欠品の状態になり、売上の機会を逃してしまいます。
目指すべきは、欠品しない範囲で在庫を最小限に抑えた適正水準を保つことです。

棚卸資産回転期間の目安

2-2 業種による違い

適正な在庫の水準は、業種によって差があります。

製造業は、原材料・仕掛品・製品という製造の各段階で在庫を持つ必要があり、完成してから売れるまでの期間もあるため、回転期間は長くなる傾向があります。シーズン前に商品を一括で仕入れて数ヶ月かけて売るアパレルや、1つあたりの金額が大きく販売までに時間がかかる不動産の販売業なども同様です。反対に、飲食業やサービス業、情報通信業のように在庫をほとんど持たずに売上を立てる業種では、回転期間は1ヶ月を大きく下回ります。

自社の水準を評価するときは、この業種差を踏まえて判断しましょう。
その上で、在庫を厚く持つ業種であっても、2ヶ月を超えたら改善が必要、3ヶ月以上は滞留在庫や含み損を抱えている可能性が高い、というのは共通の考え方となります。

3. 在庫が多いと資金繰りが悪化する理由

3-1 在庫は売れるまで費用にならない

会計のルールでは、仕入れた在庫は、売れるまで費用になりません

損益計算書の売上原価は、「期首の在庫 + 当期の仕入 − 期末の在庫」で計算されます。当期に1,000万円分を仕入れても、期末に300万円分が売れ残っていれば、費用になるのは売れた分の700万円だけです。残りの300万円は、費用ではなく棚卸資産という資産として決算書に残ります。

仕入代金の1,000万円はすでに支払っているのに、費用は700万円しか計上されないため、利益は減らず、税金も減りません。在庫が増えた期は、現金だけが先に出ていき、利益と税金は変わらないという状態になります。決算書は黒字なのに手元のお金が減っている場合、原因が在庫の増加であることは非常に多いです。

黒字のまま資金繰りが行き詰まる黒字倒産については「黒字倒産とは?原因と対策を公認会計士・税理士が解説」で詳しく解説しています。

3-2 在庫の分だけ運転資金が必要になる

在庫は、仕入代金を支払ってから販売代金が入金されるまでの間、会社がお金を立て替えている状態です。この立て替えに必要な資金が運転資金で、次の式で計算します。

所要運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 − 仕入債務

棚卸資産が増えれば、その金額だけ所要運転資金が膨らみます。月商1,000万円の会社なら、回転期間が1.5ヶ月から2.5ヶ月に延びるということは、1,000万円の資金が追加で在庫に切り替わるということです。この資金を借入で賄えば支払利息が増え、手元資金で賄えば預金が減って手元流動性比率が悪化します。

売上債権の回収にかかる期間は売上債権回転期間、仕入代金の支払いまでの期間は仕入債務回転期間と呼び、棚卸資産回転期間と同じ計算方法(残高 ÷ 月商)で計算します。運転資金はこの3つの回転期間で決まるため、セットで見ると、自社のお金がどこで滞留しているのかを特定することができます。3つのうち、自社の努力で最も動かしやすいのが棚卸資産回転期間です。回収サイトや支払サイトの変更は取引先との交渉が必要ですが、在庫の水準は自社の仕入と販売の管理で変えることができます。

運転資金、手元流動性比率については、それぞれ下記記事で詳しく解説しています。
運転資金とは?種類・計算方法・目安を公認会計士・税理士が解説
手元流動性比率とは?計算方法・目安・改善方法を公認会計士・税理士が解説

4. 棚卸資産回転期間を改善する方法

棚卸資産回転期間の計算式は「棚卸資産 ÷ 月商」なので、改善するには分子の棚卸資産を減らすことが必要になります。具体的な方法は次の3つです。
棚卸資産回転期間を改善する方法

4-1 滞留在庫を処分して現金化する

最初に手を付けるべきは、すでに抱えている売れない在庫の処分です。

仕入から半年、1年と経過しても売れていない在庫をリストアップし、値引き販売やセット販売、在庫買取業者への一括売却で現金化します。仕入値を下回る価格で売ると、その差額分だけ利益は減りますが、税負担も減り、保管コストもなくなるため、抱え続けるより処分したほうが会社に残るお金は増えます。

どうしても売れない在庫は廃棄します。廃棄した在庫の帳簿価額は廃棄損として損金算入できます。税務調査では「本当に廃棄したのか」を確認されるため、廃棄業者の証明書や廃棄時の写真、廃棄した品目のリストを残しておきましょう。

なお、在庫を保有したまま帳簿価額だけを切り下げる評価損は、税務上の要件が厳しく、災害で著しく損傷した場合や、著しく陳腐化した場合、破損・型崩れ・棚ざらし・品質変化などで通常の方法では販売できなくなった場合に限られます。売れ行きが悪い、市場価格が下がったという理由だけでは損金になりません。決算で評価損の計上を考えている場合は、要件を満たすかどうかを事前に税理士に相談しましょう。

参考:国税庁|第2款 棚卸資産の評価損

4-2 仕入・発注の量を需要に合わせて見直す

処分と並行して、在庫が増える原因になっている仕入・発注量の見直しを行います。

過剰在庫の原因で多いのは、仕入単価の値引きを目的としたまとめ買いです。1個あたりの仕入値は下がっても、売り切るまでに何ヶ月もかかる量を仕入れれば、値引きで得た利益より、在庫に固定される資金の負担と売れ残りのリスクのほうが大きくなります。まとめ買いの判断は、単価の安さだけでなく、その量を何ヶ月で売り切ることができるかとあわせて行いましょう。

発注の頻度を上げて1回あたりの量を減らすことも、在庫の圧縮につながります。月1回のまとめ発注を週1回の発注に変えれば、手元に置く在庫は単純計算で4分の1になります。仕入先への交渉で納品までの日数を短くしてもらうことができれば、欠品に備えて余分に持つ在庫も減らせます。

仕入の判断の精度を上げるには、商品や商品グループごとに回転期間を計算して、よく売れている商品と動きの悪い商品を分けて把握することも有効です。売れている商品は欠品させず、動きの悪い商品は追加仕入を止める、という判断を商品単位で行うことができるようになります。

4-3 実地棚卸で在庫の実態を定期的に確認する

実地棚卸とは、帳簿上の在庫と実際の在庫を照合する作業です。

決算のときだけ行っている会社が多いですが、年1回では、帳簿と数が合わない在庫や、破損・劣化した在庫の発見が遅れる可能性があります。可能なら半年に1回、四半期に1回行うと、滞留在庫や含み損を早い段階で発見して、処分や仕入・発注の見直しにつなげられます。

5. Q&A

Q1. 期末に在庫が大きく増減する場合、回転期間はどう計算すればよいですか?

A. 期首と期末の平均残高、または月次の平均残高で計算しましょう。

回転期間の分子に使う棚卸資産は、決算日という一時点の残高です。季節商品を扱う会社や、決算月の直前に大口の仕入がある会社では、期末残高だけで計算すると実態とかけ離れた数字になります。たとえば冬物商品を12月決算の直前に大量に仕入れる会社は、期末の在庫が1年で最も膨らんだ状態で計算されるため、回転期間が通常時より長く出ます。

このような会社は、「(期首の棚卸資産 + 期末の棚卸資産)÷ 2」の平均残高で計算するか、月次試算表の在庫残高12ヶ月分の平均を使うと、実態に近い回転期間を把握することができます。なお、銀行は決算書の期末残高をもとに計算するため、期末に在庫が膨らむ事情がある会社は、その旨を銀行に説明しておきましょう。

Q2. 決算月の直前に在庫をまとめて仕入れれば、節税になりますか?

A. なりません。

仕入れた在庫は、売れるまで費用にならないためです。

決算直前に1,000万円分を仕入れても、期末までに売れなければ、1,000万円は費用ではなく棚卸資産として決算書に残ります。利益は圧縮されないので、税金も減りません。減るのは手元の現金だけです。

決算前に在庫についてできる対策は、仕入を増やすことではなく、逆に売れない在庫を処分することです。値引き販売すれば現金化でき、廃棄すれば廃棄損を損金に算入できます。翌期に持ち越す在庫が減れば、棚卸資産回転期間も改善します。

Q3. 倉庫が在庫でいっぱいです。追加で借りるべきですか?

A. 倉庫を増やす前に、まず在庫を減らす余地がないかを確認しましょう。

倉庫が手狭になったとき、保管場所の追加は最も分かりやすい解決策に見えますが、家賃という固定費が毎月増え続けるうえ、保管能力に余裕ができると在庫はさらに積み上がりやすくなります。在庫が増えた原因が売上の成長であれば倉庫の追加は妥当な投資ですが、回転期間が以前より延びているのであれば、増えているのは売れない在庫の可能性が高いです。

Q4. 融資の面談で、銀行から在庫について質問されました。どう対応すればよいですか?

A. 在庫の内訳と、増減の理由を具体的に説明しましょう。

銀行が在庫について質問するのは、回転期間が同業他社より長いときや、前期と比べて在庫が大きく増えているときなどです。確認したいのは、売れない在庫が混ざっていないか、在庫の金額が正しいかなので、主要な品目と金額の内訳、在庫が多い理由(受注済みの案件向け、シーズン前の仕入など)、長期間残っている在庫の有無を明確に伝えられると、銀行の理解を得やすくなります。

反対に、説明があいまいだと、不良在庫や粉飾の疑いが残ったまま審査が進み、評価に不利に働くおそれがあります。

6. まとめ

棚卸資産回転期間について、計算方法・目安・改善方法を解説しました。
ポイントは次のとおりです。

  • 棚卸資産回転期間は在庫が月商の何ヶ月分あるかを示す指標
    「棚卸資産 ÷ 月商」で計算
  • 棚卸資産回転期間の目安は「目標1ヶ月未満、3ヶ月以上は問題あり」
    業種による適正在庫の違いも考慮
  • 在庫が多いと資金繰りが悪化する
    在庫は売れるまで費用にならない、在庫の分だけ運転資金が必要になる
  • 改善方法は、①滞留在庫の処分 ②仕入・発注量の見直し ③定期的な実地棚卸

当事務所では、記帳代行や税務申告だけでなく、毎月の数字をもとにした経営改善・資金繰りのアドバイスまで行っています。初回無料相談も承っておりますので、税金や会計についてはもちろん、資金調達・資金繰りに関しても、お気軽にお問い合わせください。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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Relyne会計事務所 代表 永野隆丞

この記事を書いた人

永野 隆丞(公認会計士・税理士)

日本公認会計士協会 東京会 46468号/東京税理士会 157067号

Relyne(リライン)会計事務所 代表。
有限責任監査法人トーマツ、ミネベアミツミ株式会社での監査・経理実務を経て、東京都千代田区で開業しました。クラウド会計freeeを活用した創業期の会社のサポートを強みとしています。ブログ記事は顧問先様に実際に説明するときにも活用しており、会計や税金に初めて触れる方でも分かりやすい内容を心がけています。趣味はサッカー観戦・野球・将棋です。

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