少額減価償却資産の特例とは?40万円未満への引上げ・取得価額ごとの処理・適用要件・申告方法を税理士が解説
Relyne(リライン)会計事務所の永野です。
青色申告をしている中小企業は、少額減価償却資産の特例により、パソコン・複合機・機械装置・工具などを購入した年に全額経費にすることができます。
令和8年度税制改正により、その対象が取得価額30万円未満から40万円未満に広がりました。
本記事では、少額減価償却資産の特例の内容、令和8年度税制改正の変更点、取得価額ごとの処理の違い、適用要件、会計処理、申告の手続きを公認会計士・税理士が解説します。
1. 少額減価償却資産の特例とは
1-1 概要
少額減価償却資産の特例とは、青色申告をしている中小企業者等が、取得価額40万円未満の減価償却資産を取得して事業に使い始めたときに、その取得価額の全額を使い始めた事業年度の損金(経費)にできる制度です(租税特別措置法第67条の5)。
個人事業主の所得税にも同じ内容の制度があります(同法第28条の2)。
パソコンや机などの備品は買った年に全額を経費にすることができず、資産の種類ごとに定められた法定耐用年数に応じて数年に分けて経費にします(減価償却)。
例えば、パソコンの耐用年数は4年、金属製の事務机は15年、エアコンは6年となっています。
この特例を使うと、耐用年数に関係なく、買った年に全額を損金にすることができます。
ただし、1事業年度に特例を使うことができる金額は、取得価額の合計で300万円までです。
また、この特例は期限付きの制度で、現在は令和11年3月31日までに取得して事業に使い始めた資産が対象となります。
参考:中小企業庁|少額減価償却資産の特例
参考:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表

1-2 令和8年度税制改正の変更点|40万円未満はいつから使えるか
令和8年度税制改正では、次の点が変わりました。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 対象となる資産の取得価額 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 対象となる法人の従業員数 | 常時使用する従業員500人以下 | 常時使用する従業員400人以下 |
| 適用期限 | 令和8年3月31日まで | 令和11年3月31日まで |
| 1事業年度の上限 | 300万円 | 300万円(変更なし) |
40万円未満の基準が使えるのは、令和8年4月1日以後に取得して事業に使い始めた資産です。
事業年度の始まりではなく、資産を取得した日で判定します。
そのため、3月決算以外の会社では、同じ事業年度の中に判定基準が混在します。
例えば、12月決算の会社(令和8年1月1日〜令和8年12月31日)が35万円のパソコンを買った場合、次のように判定が分かれます。
| 取得日 | 判定基準 | 35万円のパソコン |
|---|---|---|
| 令和8年3月 | 30万円未満 | 特例の対象外(通常の減価償却) |
| 令和8年7月 | 40万円未満 | 特例の対象 |
なお、中小企業経営強化税制のE類型の適用を受ける会社は、その投資計画の期間中はこの特例を使うことはできません。
参考:国税庁|令和8年度法人税関係法令の改正の概要(4 主な中小企業税制の見直し)
参考:中小企業庁|少額減価償却資産の特例を拡充しました(パンフレット)
1-3 通常の減価償却との違いと節税効果
3月決算の会社が、令和9年4月に35万円のパソコンを買ってすぐに使い始めた場合で比較します。
パソコンの法定耐用年数は4年、届出をしていない場合の償却方法は定率法(償却率0.500)です。
| 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 通常の減価償却 | 175,000円 | 87,500円 | 43,750円 | 43,749円 | 349,999円 |
| 特例を使った場合 | 350,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 350,000円 |
※通常の減価償却は帳簿価額1円を残すため、合計が1円少なくなります。
特例を使うと、1年目の損金が175,000円多くなります。法人税等の実効税率を30%とすると、1年目の税金は約52,500円減ります。
ただし、特例で減るのは1年目の税金であり、2年目以降はその分だけ損金が減るので、トータルの納税額は変わりません。
税金以外の効果として、固定資産台帳で毎年の償却費を計算する手間がなくなります。会計ソフトを使っていれば基本的に償却費は自動計算されるので、あまり意識することはないかもしれませんが、資産の数が増えるほど台帳の管理は楽になります。
2. 取得価額に応じた4つの処理
2-1 一覧表と取得価額の判定
減価償却資産を買ったときの処理は、1台(1組)あたりの取得価額により次の4つに分かれます。
| 取得価額 | 処理方法 | 使える会社 | 損金になる時期 | 償却資産税 |
|---|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費など損金処理 | 全ての会社 | 使用開始年度 | 対象外 |
| 10万円以上 20万円未満 |
①一括償却資産 ②少額減価償却資産の特例 |
①全ての会社 ②青色申告の 中小企業者等 |
①3年間 ②使用開始年度 |
①対象外 ②対象 |
| 20万円以上 40万円未満 |
少額減価償却資産の特例 | 青色申告の 中小企業者等 |
使用開始年度 | 対象 |
| 40万円以上 | 通常の減価償却 | 全ての会社 | 耐用年数 | 対象 |
※特例の対象にならない資産(特例を使わない資産)は耐用年数に応じた通常の減価償却
1台・1組ごとに判定する
取得価額は、通常1単位として取引される単位ごとに判定します。
例えば、応接セットはテーブルと椅子を合わせて1組、カーテンは1部屋分で1単位となります。
一方、パソコン本体とモニターのように、それぞれ単独で使えるものであれば、別々に判定できます。複数をまとめて買って合計が40万円を超えても、1台ごとの価格が40万円未満であれば、それぞれが特例の対象となります。
なお、取得価額には、本体の価格に加えて、引取運賃や購入手数料、設置費用など事業に使い始めるまでにかかった費用も含めます。
参考:国税庁|No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
参考:国税庁|No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用
税込・税抜のどちらで判定するか
10万円・20万円・40万円の判定は、会社が採用している消費税の経理方式で決まります。
税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で判定します。消費税の免税事業者は税込経理しか採用できないため、税込金額で判定することになります。
例えば、税抜38万円(税込41.8万円)の複合機を買った場合、税抜経理の会社は38万円で判定するので特例の対象となりますが、税込経理の会社は41.8万円で判定するので対象外となります。
課税事業者であれば、税抜経理を採用することで特例を使うことができる金額の幅が広がります。

2-2 10万円未満:消耗品費など損金処理
取得価額が10万円未満の減価償却資産は、使い始めた事業年度に費用として処理すれば、全額が損金になります(法人税法施行令第133条)。使用可能期間が1年未満のものも同じ扱いです。
勘定科目は消耗品費や事務用品費を使い、固定資産には計上しません。
なお、いったん固定資産に計上したものを翌期以降に費用に振り替えても損金にはならないので、買った事業年度に費用処理しましょう。
2-3 10万円以上20万円未満:一括償却資産と特例の使い分け
取得価額が10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産として処理する方法と、少額減価償却資産の特例を使う方法のどちらかを資産ごとに選ぶことができます。
一括償却資産とは
一括償却資産とは、取得価額20万円未満の資産をまとめて、3年間で取得価額の3分の1ずつ損金にする処理です(法人税法施行令第133条の2)。
年度の途中で買っても月割計算はせず、初年度から3分の1を損金にします。
一括償却資産の特徴は次のとおりです。
- 償却資産税(固定資産税)の申告対象にならない
- 3年の途中で廃棄・売却しても、除却損は計上できず、残りを引き続き3分の1ずつ損金にする
- 申告時に別表16(8)を添付する
一括償却資産については「一括償却資産とは?メリット・デメリット・少額減価償却資産との違いを税理士が解説」をご参照ください。
どちらを選ぶか
| 一括償却資産 | 少額減価償却資産の特例 | |
|---|---|---|
| 買った年の損金 | 取得価額の3分の1 | 取得価額の全額 |
| 償却資産税 | 対象外 | 対象 |
| 年間上限額 | なし | 年300万円 |
| 使える会社 | 全ての会社 | 青色申告の中小企業者等 |
償却資産(店舗の内装や機械など)が少ない会社は、特例を使って買った年に全額損金にするとよいでしょう。償却資産税は課税標準額(償却資産の評価額の合計)が180万円未満なら課税されないため、償却資産がパソコンと机程度であれば、特例を使っても償却資産税はかかりません。
一方、飲食店や製造業のように厨房設備や機械などで課税標準額が180万円を超えている会社では、特例を使うと20万円未満の備品にも償却資産税がかかります。18万円のパソコンであれば税額は初年度で2,000円前後、2年目以降は評価額の減少に応じて毎年減っていきます。
また、特例の年300万円の枠を20万円以上の資産に使い切りそうな年は、20万円未満の資産を一括償却資産に回すと、枠を有効に使うことができます。
2-4 20万円以上40万円未満:特例で全額損金処理
取得価額が20万円以上40万円未満の資産は、青色申告の中小企業者等であれば少額減価償却資産の特例で全額を損金にすることができます。
一括償却資産にはできないため、特例を使わない場合は通常の減価償却処理をします。
2-5 40万円以上:通常の減価償却処理
取得価額が40万円以上の資産は、法定耐用年数に応じて減価償却処理をします。法人が償却方法の届出をしていない場合、建物・建物附属設備・構築物は定額法、機械装置・車両・器具備品は定率法で計算します。
なお、機械装置や一定の器具備品への投資には、中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制といった別の優遇制度(特別償却・税額控除)がありますが、少額減価償却資産の特例とこれらの制度は、同じ資産に重ねて使うことができません。
参考:国税庁|No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)
参考:国税庁|No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)
3. 特例の適用要件
3-1 対象となる法人・個人事業主
法人
法人がこの特例を使うには、次の要件を全て満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 青色申告をしていること | 青色申告承認申請書を提出し、承認を受けている法人 |
| ② 中小企業者であること | 資本金1億円以下の法人 (資本金がない法人は従業員1,000人以下) ただし、資本金1億円超の法人など(大規模法人)に発行済株式の2分の1以上を持たれている法人や、複数の大規模法人に3分の2以上を持たれている法人は除く |
| ③ 常時使用する従業員が400人以下であること | 令和8年度税制改正で500人以下から引下げ |
| ④ 適用除外事業者でないこと | 前3事業年度の所得金額の平均が15億円を超える法人は対象外 |
| ⑤ 通算法人でないこと | グループ通算制度を使っている法人は対象外 |
設立したての会社であれば、資本金は1億円以下、従業員は400人以下、所得も15億円以下であることがほとんどなので、②〜⑤で引っかかることはまずありません。
実質的な条件は青色申告をしているかどうかです。
青色申告については「法人の青色申告とは?メリット・提出期限・注意点を税理士が解説」をご参照ください。
なお、中小企業者に該当するかは、資産を取得した日と事業に使い始めた日の状況で判定します。
参考:国税庁|第67条の5《中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例》関係
個人事業主
個人事業主は、青色申告をしていて、常時使用する従業員が400人以下であれば対象となります。
3-2 対象となる資産・ならない資産
特例の対象となるのは、取得価額40万円未満の減価償却資産です。
有形・無形、新品・中古を問いません。
| 資産 | 対象 | 補足 |
|---|---|---|
| パソコン、複合機、事務机などの器具備品 | ◯ | |
| 機械装置、工具 | ◯ | |
| 車両(中古車を含む) | ◯ | 40万円未満の中古車や原付・自転車など |
| ソフトウェア | ◯ | 無形減価償却資産も対象 |
| 特許権、商標権 | ◯ | 無形減価償却資産も対象 |
| 中古で買った備品 | ◯ | 新品・中古を問わない |
| リースした資産(所有権移転外リース取引) | ◯ | 会計上、リース資産に計上している場合 |
| 土地、借地権 | ✖ | 減価償却資産ではない |
| 販売するための商品 | ✖ | 棚卸資産であり、減価償却資産ではない |
| 事務所の礼金、開業費 | ✖ | 繰延資産であり、減価償却資産ではない |
| 貸付けに使う資産 (主要な事業として貸し付けるものを除く) |
✖ | 令和4年4月1日以後の取得分から除外 |
| 特別償却、税額控除、圧縮記帳を使う資産 | ✖ | 他の優遇制度との重複適用は不可 |
3-3 年間300万円の上限
特例の上限は、1事業年度に取得した少額減価償却資産の取得価額の合計で300万円までです。
例えば、35万円のパソコンを9台(合計315万円)買った場合、8台分(280万円)までが特例の対象となり、9台目は通常の減価償却処理をします。残りの20万円の枠は使うことができません。
どの資産を特例の対象にするかは会社が選ぶことができるので、300万円を超えそうな年は、金額が大きく耐用年数が長い資産を特例の対象とし、20万円未満の資産は一括償却資産にすることで、買った年の損金を多くすることができます。
なお、事業年度が1年に満たない場合、上限は「300万円÷12×その事業年度の月数」になります。
(1か月未満の端数は1か月に切上げ)
例えば、令和8年9月20日に設立した3月決算の会社の初年度(令和8年9月20日〜令和9年3月31日)は、6か月と12日を7か月として、上限は175万円となります。
4. 会計処理
4-1 仕訳例
特例を使う資産は、いったん固定資産に計上し、決算で全額を減価償却費として処理します。
税抜経理の会社が、35万円(税抜)のパソコンを普通預金で買った場合の仕訳は次のとおりです。
購入時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 350,000円 | 普通預金 | 385,000円 |
| 仮払消費税 | 35,000円 |
決算時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 350,000円 | 工具器具備品 | 350,000円 |
決算時の仕訳は、貸方を「減価償却累計額」にする間接法でも構いません。
購入時に消耗品費で全額を費用処理しても、法人税法上の損金経理の要件は満たします。
しかし、消耗品費で処理すると固定資産台帳に載らず、償却資産税の申告上漏れてしまいます。
そのため、特例を使う資産は固定資産台帳に登録し、減価償却費を計上しましょう。
4-2 消費税の取扱い
消費税の仕入税額控除は、特例を使うかどうかに関係なく、資産を買った課税期間に取得価額全体に対して受けることができます。
ただし、仕入税額控除を受けるには売手が発行したインボイス(適格請求書)の保存が必要です。
売手が免税事業者などでインボイスがない場合は、仕入れを行った日時点の経過措置の割合(令和8年9月30日までは80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%)だけ控除することができます。
このとき、控除できない消費税分は資産の取得価額に含めて40万円未満かどうかを判定します。
例えば、令和8年10月以後に免税事業者から税抜38万円の中古機械を買った場合、控除できない消費税11,400円(38,000円×30%)を加えた391,400円が取得価額となります。
消費税・インボイス制度については、下記記事でそれぞれ解説しています。
「【図解】消費税の仕組みを税理士が徹底解説|納税義務の判定・計算方法からインボイスまで」
「インボイス制度とは?仕組み・登録の判断・売り手と買い手それぞれの対応を税理士が解説」
4-3 freee会計での登録方法
freee会計では、購入時の取引を登録した後、固定資産台帳に資産を登録し、償却方法で「少額償却」を選びます。これで取得価額の全額が減価償却費として自動で計上されます。一括償却資産にする場合は「一括償却」、通常の減価償却をする場合は「定率法」または「定額法」を選びます。
固定資産台帳に登録しておくと、その内容が freee申告の償却資産申告に連携されるので、翌年1月の償却資産税の申告で資産を登録し直す必要がありません。
参考:freeeヘルプセンター|固定資産の償却方法
参考:freeeヘルプセンター|固定資産の登録(償却資産申告との連携)
会計ソフトの選び方については「会計ソフトの選び方を公認会計士・税理士が解説|種類・確認すべき7つのポイント・法人におすすめのソフトまで」もあわせてご参照ください。
5. 申告の手続き
5-1 法人:別表16(7)と適用額明細書
法人が特例を使うには、次の3つが必要です。税務署への事前の届出や申請はありません。
- 資産を使い始めた事業年度に、取得価額の全額を費用として処理する(損金経理)
- 別表16(7)「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」を添付する
- 適用額明細書を添付する
別表16(7)には、資産1つにつき1列を使って①〜④を記載し、⑤にその合計を記載します。
1-3の設例(令和9年4月に35万円のパソコンを購入)であれば、次のとおりです。

- ① 資産の種類・構造・細目:耐用年数表の区分に合わせて記載します
(例:種類「器具及び備品」、構造「事務機器及び通信機器」、細目「電子計算機」) - ② 事業の用に供した年月:使い始めた年月を記載します(例:令和9年4月)
- ③ 取得価額又は製作価額:1台あたりの取得価額を記載します(例:350,000円)
- ④ 差引改定取得価額:③から圧縮記帳の積立金計上額を差し引いた金額で、圧縮記帳をしていなければ③と同じ金額です(例:350,000円)
- ⑤ 当期の少額減価償却資産の取得価額の合計額:④の合計を「8」欄に記載します。
この金額が300万円を超えることはできません。
資産が5つを超える場合は2段目・3段目の列に記載し、15を超える場合はもう1枚別表を使います。
会計上は全額を減価償却費にしていても、別表の添付を忘れると、法定耐用年数による償却限度額を超えた部分が損金として認められません。
適用額明細書には、次の①〜③を1行に記載します。

- ① 租税特別措置法の条項:「第67条の5第1項」
- ② 区分番号:「00277」
- ③ 適用額:別表16(7)の「8」欄の金額(例:350,000円)
参考:国税庁|法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)
参考:国税庁|適用額明細書に関するお知らせ
参考:国税庁|令和8年4月1日以後終了事業年度に使用する区分番号一覧表
5-2 個人事業主:青色申告決算書の書き方
個人事業主は、青色申告決算書の3枚目「減価償却費の計算」欄に、次のように記載します。
| 欄 | 記載内容 |
|---|---|
| 減価償却資産の名称等 | 資産の名称(例:ノートパソコン) |
| 取得年月 | 買った年月 |
| 取得価額 | 1台あたりの取得価額 |
| 本年分の必要経費算入額 | 取得価額の全額 |
| 摘要 | 「措法28の2」 |
資産の数が多い場合は、1行にまとめて「少額減価償却資産の取得価額の合計額」を記載し、「償却の基礎になる金額」欄に「明細は別途保管」と書いたうえで、資産ごとの明細を手元に保管しておく方法も認められています。
法人と違い、別表や適用額明細書の添付はありません。
5-3 償却資産税の申告
償却資産税(固定資産税のうち償却資産にかかるもの)は、法人税・所得税とは別に市区町村(東京23区は都税事務所)に納める税金です。少額減価償却資産の特例で全額を損金にした資産は、帳簿価額がゼロになっていても償却資産税の申告対象となります。地方税では租税特別措置法による即時償却が認められていないためです。
| 法人税の処理 | 償却資産税の申告 |
|---|---|
| 10万円未満を消耗品費で処理 | 申告不要 |
| 一括償却資産(3年均等) | 申告不要 |
| 少額減価償却資産の特例 | 申告が必要 |
| 通常の減価償却 | 申告が必要 |
申告は、毎年1月1日時点で持っている償却資産について、1月31日までに資産のある市区町村に行います。税額は評価額の合計(課税標準額)の1.4%で、課税標準額が180万円未満なら課税されません。ただし、180万円未満でも申告自体は必要です。
6. Q&A
Q1. 特例を使うために、事前に税務署へ届出は必要ですか?
A. 不要です。
法人は確定申告書に別表16(7)と適用額明細書を添付し、個人事業主は青色申告決算書の摘要欄に「措法28の2」と記載すれば、適用を受けることができます。
Q2. クレジットカードの分割払いやローンで買った場合も対象になりますか?
A. 対象となります。
支払方法に関係なく、取得価額の全額を使い始めた事業年度の損金にすることができます。35万円のパソコンを24回払いで買った場合でも、35万円が特例の対象です。なお、分割手数料やローンの利息は取得価額に含めず、支払時に支払手数料や支払利息として費用処理します。
Q3. 決算月に注文しましたが、納品が翌期になりました。今期の損金にできますか?
A. できません。
特例は「事業の用に供した事業年度」の損金にできる制度です。代金を支払っていても、納品されて使い始めたのが翌期であれば、翌期の損金になります。
Q4. 今期は赤字なので特例を使わず、翌期以降に減価償却したいです。可能ですか?
A. 可能です。
特例を使うかどうかは資産ごとに選ぶことができ、使わなければ通常の減価償却になります。
法人の減価償却は任意なので、今期は償却費を計上せず、翌期以降に償却することもできます。
ただし、青色申告の赤字(欠損金)は10年間繰り越して翌期以降の黒字と相殺できるので、赤字の年に特例を使っても税金の面で損をするわけではありません。
Q5. 特例で全額償却したパソコンを売却・廃棄したときの処理はどうなりますか?
A. 売却した場合、売却代金の全額が固定資産売却益(雑収入)になります。
特例で帳簿価額ゼロとなっているため、取得価額との差額を計算する必要はありません。
廃棄の場合、帳簿価額ゼロなので損益は発生せず、固定資産台帳から除却の登録をするだけです。
いずれの場合も、翌年1月の償却資産税の申告で「減少資産」として申告しましょう。
申告を忘れると、手元にない資産に課税され続けます。
Q6. 白色申告の会社や個人事業主は、40万円未満の備品をどう処理しますか?
A. 白色申告では少額減価償却資産の特例を使うことができません。
10万円未満は消耗品費で全額損金、10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年で損金にし、20万円以上は通常の減価償却をします。20万円以上40万円未満の備品を買った年に全額損金にしたいのであれば、青色申告に切り替えましょう。
Q7. 中古車を38万円で買いました。特例の対象になりますか?
A. 対象となります(税抜経理の場合は税抜38万円、税込経理の場合は税込38万円で判定)。
車両は減価償却資産であり、中古資産も特例の対象なので、取得価額が40万円未満であれば全額を買った年の損金にすることができます。取得価額には、車両本体の価格に加えて、納車費用や取得のためにかかった費用も含めます。自動車税や自賠責保険料は取得価額に含めず、租税公課や保険料として処理します。
7. まとめ
少額減価償却資産の特例について、令和8年度税制改正の内容、取得価額ごとの処理の違い、適用要件、会計処理、申告の手続きを解説しました。ポイントは次のとおりです。
- 青色申告の中小企業者等は、取得価額40万円未満の資産を買った年に全額損金にできる
上限は年間300万円、令和8年4月1日以後に取得した資産から - 取得価額は通常1単位として取引される単位ごとに、会社の経理方式(税抜・税込)で判定
- 法人は損金経理をしたうえで別表16(7)と適用額明細書を添付
個人事業主は青色申告決算書の摘要欄に措法28の2と記載 - 特例で全額損金にした資産も償却資産税の申告対象になる
当事務所では、日々の経理処理のチェックから決算・税務申告、税務調査の対応まで、法人の税務をサポートしています。初回無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
最後までご覧いただきありがとうございました。

この記事を書いた人
永野 隆丞(公認会計士・税理士)
日本公認会計士協会 東京会 46468号/東京税理士会 157067号
Relyne(リライン)会計事務所 代表。
有限責任監査法人トーマツ、ミネベアミツミ株式会社での監査・経理実務を経て、東京都千代田区で開業しました。クラウド会計freeeを活用した創業期の会社のサポートを強みとしています。ブログ記事は顧問先様に実際に説明するときにも活用しており、会計や税金に初めて触れる方でも分かりやすい内容を心がけています。趣味はサッカー観戦・野球・将棋です。
