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譲渡制限株式とは?定款の記載方法・メリット・デメリット・よくあるトラブルを公認会計士・税理士が解説

Relyne(リライン)会計事務所の永野です。

譲渡制限株式とは、譲渡による取得に会社の承認を必要とする株式のことです。
新しく設立される株式会社のほとんどが定款で譲渡制限を付けています。

この記事では、譲渡制限株式の内容、定款の記載方法、メリット・デメリット、譲渡手順、よくあるトラブルを公認会計士・税理士が解説します。

会社設立手順については「【2026年版】自分でできる株式会社の設立手順を分かりやすく解説」で解説していますので、合わせてご参照ください。

1. 譲渡制限株式とは

1-1 株式は自由に譲渡できるのが原則

株主は、自分が持っている株式を自由に譲渡することができます(会社法第127条)。
これを「株式譲渡自由の原則」といいます。

株主は、出資したお金を会社から払い戻してもらうことができません。
そのため、株式を他人に売ることで出資したお金を回収する手段が保障されています。
上場会社の株式が証券取引所で毎日売買されているのは、この原則があるためです。

参考:e-Gov法令検索|会社法(第127条)

1-2 譲渡制限株式=譲渡による取得に会社の承認が必要な株式

譲渡制限株式とは、譲渡によってその株式を取得するには、会社の承認を受けなければならないと定款で定められた株式のことです(会社法第2条第17号、第107条第1項第1号)。

会社の承認を受けずに譲渡しても、譲り受けた人は株主名簿の名義書換を会社に請求することができず、会社に対して株主であることを主張することができません(会社法第134条)。

株主が親族や仲間だけの会社で、見ず知らずの人や競合他社が株主になると、株主総会で経営に口を出される、会計帳簿の閲覧を請求される、持株比率によっては役員を解任されるといったことが起こります。株式の取得に会社の承認を必要とすることで、こうした事態を防ぐことができます。

参考:e-Gov法令検索|会社法(第107条)
譲渡制限株式

1-3 非公開会社(株式譲渡制限会社)と公開会社の違い

発行するすべての株式に譲渡制限を付けている会社を「非公開会社」といいます。
「株式譲渡制限会社」とも呼ばれます。

一方、1株でも譲渡制限のない株式を発行している会社は「公開会社」といいます。
(会社法第2条第5号)

なお、「公開会社」は上場会社という意味ではありません。
上場していなくても、譲渡制限のない株式を発行していれば会社法上は公開会社となります。
反対に、上場会社は上場審査で譲渡制限がないことが求められるため、すべて公開会社です。

非公開会社と公開会社の主な違いは次のとおりです。

非公開会社
(株式譲渡制限会社)
公開会社
株式の譲渡 会社の承認が必要 自由(一部の株式のみ制限も可)
取締役会の設置 任意(取締役1名で設立可) 必須(取締役3名以上+監査役等)
役員の任期 定款で最長10年まで伸長可 取締役2年・監査役4年
株主総会の招集通知 1週間前まで 2週間前まで
発行可能株式総数 制限なし 発行済株式総数の4倍まで

新設会社は、特別な理由がない限り非公開会社とするのが一般的です。

取締役会など機関設計については「株式会社の機関設計とは?種類・役割・選び方を税理士が解説」も合わせてご参照ください。

2. 定款の記載方法

2-1 定款の記載例

株式の譲渡制限は、定款に記載して初めて効力が生じる「相対的記載事項」です。
法務局が公表している設立登記の記載例では、次のようになっています。

(株式の譲渡制限)
第○条 当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を受けなければならない。

この定めは設立登記の登記事項でもあり、登記が完了すると、履歴事項全部証明書の「株式の譲渡制限に関する規定」の欄に定款と同じ文言が記載されます(会社法第911条第3項第7号)。

参考:法務局|株式会社設立登記申請書の記載例(取締役会非設置会社)
参考:日本公証人連合会|定款等記載例

2-2 承認機関の定め方

取締役会非設置会社では株主総会、取締役会設置会社では取締役会が譲渡を承認する機関です。
(会社法第139条第1項)
「当会社の承認」と記載した場合は、この機関が承認します。
ただし、定款で定めれば、これ以外の機関を承認機関にすることもできます。

承認機関 定款の書き方
株主総会 「株主総会の承認を受けなければならない」
取締役会 「取締役会の承認を受けなければならない」
取締役
(代表取締役)
「取締役の承認を受けなければならない」
「代表取締役の承認を受けなければならない」

承認機関を取締役や代表取締役にすると、株主総会や取締役会を開かずに承認できます。
一方、株主が複数いる会社では、他の株主が関与しないまま承認が決まってしまいます。

なお、承認機関を株主総会とした場合、譲渡を承認する決議は普通決議です。
株主が1人の会社であっても、承認した記録として株主総会議事録を作成する必要があります。

株主総会議事録については「株主総会議事録の書き方を公認会計士・税理士が解説|記載事項・記載例・押印の要否・テンプレートの活用方法まで」で解説しています。

参考:e-Gov法令検索|会社法(第139条)

2-3 株主間の譲渡は承認したものとみなす定め

定款には、「一定の場合には会社が承認したものとみなす」という定めを置くこともできます。
(会社法第107条第2項第1号ロ)
よく使われるのが、既存の株主に譲渡する場合を承認不要とする定めです。

(株式の譲渡制限)
第○条 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合には、承認をしたものとみなす。

日本公証人連合会の定款記載例には、このただし書きが入っています。

このただし書きを入れると、家族間や共同経営者間での株式譲渡時に承認手続きを省略できます。
一方で、株主同士の売買で持株比率が変わることを、会社や他の株主が止められなくなります。
そのため、共同経営で持株比率を管理したい場合は、ただし書きを入れずに、株主間の譲渡も承認の対象にしておく必要があります。

2-4 設立後に譲渡制限を変更する場合の手続き

譲渡制限は設立後に変更できますが、定款変更と変更登記(登録免許税3万円)が必要です。

設立後に譲渡制限を付ける場合、株主が自由に株式を売る権利を奪うことになるため、通常の定款変更より厳しい「特殊決議」が必要です。議決権を行使できる株主の半数以上であって、その株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要になります(会社法第309条第3項第1号)。
また、反対株主は、会社に対して自分の株式を公正な価格で買い取るよう請求できます。
(会社法第116条第1項第1号)

譲渡制限を外す場合は特別決議で変更することができますが、外した時点で公開会社になるため、取締役会と監査役の設置が必要になり、取締役・監査役の任期はその時点で満了します。
(会社法第327条第1項、第332条第7項第3号、第336条第4項第4号)
発行可能株式総数も発行済株式総数の4倍以内に収める必要があります。

設立時であれば定款に記載するだけで済むため、最も手間がかかりません。

参考:e-Gov法令検索|会社法(第309条)
参考:国税庁|No.7191 登録免許税の税額表

3. 譲渡制限株式のメリット・デメリット

3-1 メリット

① 望まない相手が株主になることを防ぐことができる
株主が会社の承認なしに株式を売っても、買った人は株主名簿に載らず、株主としての権利を行使できません。株主が誰かを会社が把握し続けることができます。

② 役員の任期を最長10年にできる
取締役の任期は2年、監査役は4年ですが、非公開会社は定款で10年まで伸ばせます。
(会社法第332条第2項、第336条第2項)
任期が満了するたびに必要になる重任登記(登録免許税1万円)の回数を減らすことができます。

③ 取締役会・監査役を置かなくてよい
公開会社は取締役会の設置が必須で、取締役3名以上と監査役等が必要です。
非公開会社は取締役1名だけで設立・運営することができます(会社法第327条第1項)。

④ 取締役を株主に限定できる
非公開会社は、定款で「取締役は株主でなければならない」と定めることができます。
(会社法第331条第2項ただし書)

⑤ 株主総会の招集手続きが簡単になる
招集通知は総会の1週間前まででよく、取締役会を置かない会社は定款でさらに短くできます。
書面である必要もなく、口頭やメールでの通知も認められます(会社法第299条)。
(取締役会を置く会社では、非公開会社であっても書面が原則で、メールは株主の承諾が必要)

⑥ 相続で株式が分散しても会社に集めることができる
相続は「譲渡」ではないため、譲渡制限があっても相続人はそのまま株主になります。
ただし、定款に定めておけば、会社は相続人に対して株式を会社に売り渡すよう請求できます。
(会社法第174条)
請求には株主総会の特別決議が必要で、相続を知った日から1年以内に行います。
定款の記載例は次のとおりです。

(相続人等に対する売渡請求)
第○条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。

参考:e-Gov法令検索|会社法(第174条)

3-2 デメリット

① 株主は自由に株式を売って現金化することができない
株主から見ると、出資したお金を回収できるかどうかが会社の承認次第になります。
そのため、不特定多数の投資家から広く資金を集める使い方には向きません。
ただし、VCやエンジェル投資家からの出資は、譲渡制限があっても受けることができます。
出資を受ける側の会社は非公開会社であるのが通常で、投資家は、自分が株式を手放すときの条件(会社や他の株主による買取りなど)を投資契約で取り決めたうえで出資します。

② 譲渡を承認しない場合、会社が株式を買い取らなければならない
株主が「承認しないなら会社が買い取ってほしい」と請求している場合、会社は譲渡を承認しないのであれば、自社で買い取るか、買い取る人を指定しなければなりません(会社法第140条)。
会社が買い取るには株主総会の特別決議が必要で、買取代金は分配可能額の範囲内でなければなりません(会社法第461条第1項第1号)。
もし、買い取る資金がなければ、望まない相手への譲渡を承認するしかなくなります。

③ 相続人への売渡請求が後継者に向くことがある
売渡請求の対象になった相続人は、その株主総会で議決権を行使することができません。
(会社法第175条第2項)
社長が亡くなり後継者である子が株式を相続した場合、他の株主だけで売渡請求を決議し、後継者から株式を取り上げることができてしまいます。定款に売渡請求の定めを置くかどうかは、株主構成を踏まえて決める必要があります。後継者への承継を確実にしたいのであれば、生前に譲渡や贈与で株式を移しておく必要があります。

4. 譲渡制限株式の譲渡手順

譲渡制限株式を譲渡するときの流れは次のとおりです。
会社法で期限が細かく決められており、期限を過ぎると会社が承認したものとみなされます。

手続き 内容
① 譲渡承認請求 株主が会社に対し、譲渡する株式数・譲受人の氏名を明らかにして承認を請求する。承認されない場合に会社または指定買取人による買取りを求めるときは、その旨も記載する。
(会社法第136条〜第138条)
② 承認・不承認の決定 定款で定めた承認機関が決定する。(会社法第139条第1項)
③ 決定内容の通知 請求の日から2週間以内に通知しなければ、承認したものとみなされる。(会社法第139条第2項、第145条第1号)
④-A 承認した場合 株式譲渡契約を結び、譲渡人と譲受人が共同で株主名簿の名義書換を請求する。名義書換が完了すれば譲受人が会社に対して株主として扱われる。
④-B 承認しない場合
(買取請求あり)
会社が買い取るか、指定買取人を指定する。
1株当たり純資産額×株式数を供託したうえで、不承認の通知から40日以内(指定買取人は10日以内)に買取りを通知しなければ、承認したものとみなされる。
(会社法第140条〜第142条、第145条第2号)
⑤ 売買価格の決定 会社(指定買取人)と株主の協議で決める。
協議がまとまらなければ、買取通知から20日以内に裁判所へ価格決定を申し立てることができる。申立てがなければ供託額(1株当たり純資産額×株式数)が売買価格になる。
(会社法第144条)

参考:e-Gov法令検索|会社法(第136条〜第145条)

5. 株式譲渡制限会社でよくあるトラブル

① 2週間の期限を過ぎて、承認したことになってしまった
承認請求を受けてから2週間以内に通知しなければ、承認したものとみなされます。
請求書が届いた日を記録し、株主総会や取締役会の日程をすぐに組む必要があります。
会社と請求者の合意で期限を変えることはできますが、合意がなければ2週間です。

② 承認を受けないまま株式が譲渡されていた
承認を受けていない譲渡は、譲渡した人と譲り受けた人の間では有効ですが、会社に対しては効力がありません(最高裁昭和48年6月15日判決)。会社は名義書換に応じる必要がなく、引き続き元の株主を株主として扱います。譲り受けた人が株主として権利を行使したいのであれば、株主と共同で承認請求をする必要があります。
なお、株主が1人だけの会社でその株主が譲渡した場合は、承認がなくても会社に対して有効とされています(最高裁平成5年3月30日判決)。

③ 相続で株式が分散し、株主が誰か分からなくなった
相続には譲渡制限が及ばないため、株主が亡くなると、遺産分割が終わるまで相続人全員が株式を共有する状態になります。共有状態の株式は、相続人の中から権利を行使する人を1人決めて会社に通知しなければ、議決権を行使することができません(会社法第106条)。
相続人と連絡が取れない、遺産分割で揉めているといった理由で権利行使者が決まらないと、その株式の議決権は使われないままになります。
定款に売渡請求の定めがあっても、相続を知った日から1年を過ぎると請求することができなくなります。株主が亡くなったら、1年以内に相続人を確認し、売渡請求をするか、相続人にそのまま株主になってもらうかを決める必要があります。

6. Q&A

Q1. 株式譲渡制限会社(非公開会社)かどうかは、どこで確認できますか?

A. 履歴事項全部証明書の「株式の譲渡制限に関する規定」の欄で確認することができます。

「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を受けなければならない」といった記載があれば非公開会社です。この欄自体がなければ公開会社です。定款を見ても確認できますが、登記されている内容が対外的な証明になります。

履歴事項全部証明書については「履歴事項全部証明書とは?記載内容・必要な場面・取得方法を税理士が解説」で解説しています。

Q2. 株主が自分1人だけの会社でも、譲渡制限を付ける意味はありますか?

A. あります。

役員の任期を10年にできる、取締役会を置かなくてよいといった非公開会社の特例は、すべての株式に譲渡制限が付いていることが条件です。譲渡制限を付けずに設立すると公開会社になり、最初から取締役3名以上と監査役が必要になります。

また、将来、家族や共同経営者に株式を持ってもらった後で譲渡制限を付けようとすると、特殊決議と反対株主への買取対応が必要になります。

Q3. 譲渡制限を付けると、将来上場できなくなりますか?

A. なりません。上場する段階で外すことになります。

証券取引所の上場審査では株式に譲渡制限がないことが求められるため、上場準備の過程で定款を変更して譲渡制限を外し、取締役会や監査役会などの機関を整えます。上場を目指す会社であっても、設立時は譲渡制限を付けて非公開会社として設立するのが通常です。

Q4. 家族や共同経営者の間で株式を移すときも、会社の承認は必要ですか?

A. 定款に「株主に譲渡する場合は承認したものとみなす」という定めがなければ必要です。

売買だけでなく、贈与も譲渡に含まれます。家族に株式を贈与する場合も承認請求と承認の決議を行い、株主名簿を書き換えます。承認の記録がないまま名義だけ変えていると、後から譲渡の有効性を争われたり、税務調査で贈与の時期を確認できなかったりします。

一方、相続は譲渡ではないため、承認は不要です。

7. まとめ

譲渡制限株式の内容、定款の記載方法、メリット・デメリット、譲渡の流れを解説しました。
本記事のポイントは次のとおりです。

  • 譲渡制限株式は、譲渡による取得に会社の承認を必要とする株式
    すべての株式に譲渡制限の付いている会社が非公開会社(株式譲渡制限会社)
  • 承認機関は株主総会・取締役会が原則だが、定款で別に定めることもできる
    株主間の譲渡を承認不要とするただし書きを付けることもできる
  • メリットは、望まない相手が株主になることを防ぎ、簡素な組織で運営できること
    デメリットは、株主が自由に現金化できず、不承認の場合は会社が買い取る必要があること
  • よくあるトラブルは、みなし承認・承認を受けない譲渡・相続による株式の分散など

当事務所では、freee(フリー株式会社)と連携した専門家報酬0円の会社設立から、創業融資、設立後の経理体制づくり、決算・申告まで一貫してサポートしています。
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Relyne会計事務所 代表 永野隆丞

この記事を書いた人

永野 隆丞(公認会計士・税理士)

日本公認会計士協会 東京会 46468号/東京税理士会 157067号

Relyne(リライン)会計事務所 代表。
有限責任監査法人トーマツ、ミネベアミツミ株式会社での監査・経理実務を経て、東京都千代田区で開業しました。クラウド会計freeeを活用した創業期の会社のサポートを強みとしています。ブログ記事は顧問先様に実際に説明するときにも活用しており、会計や税金に初めて触れる方でも分かりやすい内容を心がけています。趣味はサッカー観戦・野球・将棋です。

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